近年、車両盗難の手口が高度化し、従来の「鍵を壊して盗む」といった手法だけではなく、電波を使った不正な開錠や専用工具を用いた短時間での奪取が多発しています。
身近な「我が家の駐車場」「路上」「コインパーキング」などでの被害も依然として起きており、自分の車が狙われる可能性を少しでも理解しておくことが重要です。
本記事では、盗まれやすい車の特徴や最新の車種ランキング、地域・時間帯の傾向、そして具体的な防犯対策に至るまで、幅広くかつ専門的な視点で解説します。

盗まれやすい車の特徴と共通点
まず、どのような車が盗まれやすいか、その特徴と共通点から見ていきます。
人気車種と旧型モデルの盗難リスク
人気のある車種や、旧型モデルもまた盗難のリスクが高いといえます。例えば、国内外で人気のトヨタ ランドクルーザーやトヨタ アルファードなどが上位に挙がっており、海外への転売や部品流出の対象になるためです。
旧型モデルについても、部品需要が高かったり、セキュリティ技術が新型よりやや劣るため狙われやすい傾向があります。このような人気車・旧型モデルを所有している場合は、特に防犯意識を高める必要があります。
高級車・新型車の市場価値と盗難リスク
高級車や新型車もまた格好のターゲットです。例えば、レクサス LXやレクサス RXなどの高級SUVが盗難ランキングの上位を占めています。理由としては、価格が高くリセールバリュー(再販価値)が高いこと、部品単位でも海外での需要が高いことなどが挙げられます。
さらに、新型車であればセキュリティが新しい反面、リモート・電波キーなどのシステムを狙った手口も増えてきています。そのためこうした車種を所有している方は「一般的な鍵だけ」では不十分という意識が必要です。
流通量が多い車種の盗難傾向
また、流通量が多い車種、つまり台数が多く見かける車も盗難の対象となりやすいです。多く流通していれば「部品需要」も高くなり、盗難後の処理(解体・部品転売など)がしやすいためです。
例えば、軽トラックや商用車などがこの傾向に当てはまります。つまり「目立つ」「数が多い」という点も、盗難リスクを考える上で無視できません。
盗難車ランキングとその背景
次に、実際にどの車種がどれだけ盗まれているか、最新ランキングとその背景を見ていきましょう。
最新の盗難車ランキング
最近のデータでは、2024年の車名別盗難状況で、トヨタ・ランドクルーザー(プラド含む)が688件、割合27.5%を占めたという報告があります。
また、他にもアルファード・プリウス・レクサスLX・レクサスRXなどが上位に入っています。このランキングからも明らかなように、特定の車種に被害が集中しているという傾向があります。
年間被害総額と盗難件数の推移
例えば、一般社団法人日本損害保険協会の調査によれば、車両本体盗難の件数自体は若干減少傾向にありますが、高級車の被害が増えて平均保険金支払額は上がっているという報告があります。このことから、件数だけでなく「一件あたりの被害規模」も重要な視点と言えます。
都道府県別盗難件数ランキング
地域別でも偏りがあります。例えば、2022~2023年のデータでは、愛知県が第1位、千葉県・埼玉県・神奈川県も上位に入っているという報告があります。港湾近くや交通の要所など、車両の流通や輸出が行いやすい地域で被害が多いという背景も読み取れます。
車両盗難の手口
盗難が起きるメカニズムや、最新の手口を理解することも対策には欠かせません。
近年の自動車盗難の手法
従来の「鍵を破る・窓を割る」手口から、今では電子キー・リモート通信を悪用したものが増えています。実際、工具でドアロックを解錠した後「キープログラマー」等で鍵を複製する手口も確認されています。
このように手口の変化を知ることで「古い鍵だから安心」と思わず、最新の防犯対策を検討する必要があります。
リレーアタックとその対策
最近よく報じられているのが、電子キーの電波を中継して車を不正に解錠・始動させる「リレーアタック」です。これは離れた場所からでも電波を傍受・延長することで車を盗む手口です。

対策としては、電子キーを金属ケースに入れて電波を遮断する、キーフォブを車外から遠ざけて保管する、電波遮断ポーチを使う、というような方法が有効です。
CANインベーダーの実態と防止策
さらに、車両の内部通信網(CAN バス)をターゲットにした「CANインベーダー」という手口も確認されており、車両側のシステムにアクセスして車を乗っ取るというものです。

防止策としては、OBD‑IIポートにロックを設置する、システム保護用の装置を取り付ける、また高品質なセキュリティシステムを導入することが推奨されます。
盗難が発生しやすい場所と時間帯
防犯を考える上では、どこで・いつ盗難が起きやすいかを知ることが重要です。

自宅駐車場やマンション駐車場のリスク
家の駐車場だから安心、と思いがちですが、マンション駐車場や自宅駐車場での盗難も少なくありません。死角になりやすい場所、照明が暗い時間帯、フェンスが低いなど「侵入しやすい環境」が狙われやすい条件です。駐車場周りの防犯設備(センサーライト、防犯カメラ、門扉)を改めて確認しましょう。
路上駐車とコインパーキングの危険性
路上やコインパーキングでは、クルマの前後や横を囲む柵もなく、夜間の照明も十分でない場合があります。特に深夜〜早朝の時間帯は人の目が届きにくく、盗難が行われやすい状況です。
長時間駐車する際は「無人の時間帯が長くなる」「照明が少ない」「出入口が複雑」などの条件を避けることが大切です。
商業施設の駐車場での盗難傾向
ショッピングモールや大型施設の駐車場でも、車を離れている間に狙われるケースがあります。「買い物している間」「駐車位置が店舗から離れている」などがリスク要因です。
買い物時でも車を離れる時間をできるだけ短くする、なるべく店舗に近い位置に駐車するなどの配慮が有効です。
地域別の盗難傾向と防犯対策
地域特性を踏まえた防犯策を講じることで、より効果的に愛車を守ることができます。

地域特性に応じた防犯対策
都市部・郊外・港湾エリアなど、地域によって盗難のリスクや手口が異なります。例えば、港が近く輸出ルートになりやすい地域では高級車や輸出仕様車が狙われやすいという傾向があります。そのため、地域特有のリスクを把握し、駐車の向き・場所・設備を見直すことが重要です。
盗難多発地域の共通点
データでは、特定の都道府県で盗難件数が集中的に多いという特徴があります。例えば、愛知県・千葉県・埼玉県などが該当します。
共通点として「車の流通量が多い」「港湾・輸送網が発達」「夜間でも交通が活発」などが挙げられ、これらを踏まえた駐車環境の改善が有効です。
市区町村レベルでの危険エリア
都道府県レベルだけでなく、市区町村レベルで「盗難が多いエリア」「夜間犯罪率が上がるエリア」があります。自分の居住地や駐車場のある町について、自治体の防犯マップや警察の発表を確認すると良いでしょう。
地域で防犯意識を共有することで、車上荒らしや盗難リスクを下げることが可能です。
愛車を守るための防犯対策
ここまでの内容を踏まて、愛車を守るための具体的な防犯策を紹介します。
高度なセキュリティシステムの導入
次に、電子キー電波遮断ケース、GPSトラッカー、OBDポートロック、イモビライザー、防犯アラームなどを検討しましょう。
特に、前述した「リレーアタック」や「CANインベーダー」対策としてこれらの導入が推奨されます。少しコストはかかりますが、大切な車を守るための投資と考える価値があります。
地域コミュニティとの連携
防犯は個人だけでなく地域で取り組むと効果が高まります。例えば、駐車場で「不審な動きがないか」の声掛けや、ご近所との情報共有、防犯イベント参加などが挙げられます。
また、自治体や警察が発信する防犯情報を定期的に確認し、地域の “目” を活かした防犯ネットワークを築くことも有効です。
盗難被害に遭った場合の対応
万が一、愛車が盗難被害に遭った場合に取るべき初動対応を整理します。

警察への通報と初動対応
まず、発見したら速やかに最寄りの警察庁または地域警察署に通報し、盗難届を提出します。被害の時間、場所、車両特徴、鍵・キー仕様、車内の状態を記録しておきましょう。
通報後は、車のリモート機能(位置追跡)がある場合には起動して状況を把握するとともに、警察の捜査に協力できるよう準備しましょう。
保険会社への連絡と保険金請求
次に、加入している自動車保険(盗難補償を含むかどうか確認)に連絡し、被害状況を報告します。保険金請求に必要な書類(盗難届の控え、車検証、鍵の有無等)を整理しておきましょう。
盗難車両の廃車手続きと所要時間
盗難車が戻らない場合、車両登録を抹消(廃車)する必要があります。管轄の運輸支局で手続きが必要となり、書類(盗難届の控え、自動車検査証、ナンバープレート等)を準備します。
所要時間は自治体・地域により異なりますが、早めに対応しておくことで、税金・保険料の継続支払いを防ぐことができます。
まとめ
車両盗難は「どんな車でも安心」というわけではなく、人気車種・高級車・流通量の多い車種などが特に狙われやすいという傾向があります。
さらに、手口や場所、地域によってリスクの度合いも変わってきます。ご自身の愛車の状況を踏まえて、基本的な防犯対策から最新セキュリティシステム、地域との連携まで、複合的に備えることが鍵です。
万が一被害に遭ってしまった場合も、警察・保険会社・運輸手続きを迅速に行うことで被害の拡大を防ぐことができます。ぜひ、本記事を参考に「自分ごと」として防犯対策を進めてください。

