今回は、トヨタが発表した新モデル「ランクルFJ」と、長年人気を誇る軽オフローダーであり近々受注再開の噂が立っている「ジムニーノマド」を、様々な視点から丁寧に比較します。
サイズやデザイン、エンジン・走行性能、オフロード走行、価格・維持費、内装・快適性まで、どこが強みでどこに注意すべきかを整理します。自分のライフスタイルにぴったり合う一台を探す手がかりにどうぞ。
ランクルFJの基本スペック
次に、新型ランクルFJの基本情報をご紹介します。前述のジムニーノマドとの比較も併せてご覧ください。
ランクルFJってどんなクルマ?

FJクルーザーは、2006年に北米市場を中心に登場したSUVで、日本国内では2010年から販売が開始されました。開発コンセプトは「ネオ・レトロ・オフローダー」。1960年代のトヨタ「ランドクルーザー FJ40」の意匠を受け継ぎながら、現代の技術でよみがえらせたモデルです。
外観は丸みを帯びたボディとクラシカルなフロントフェイスが特徴で、見た目のインパクトは抜群。ドア構造は観音開きの「スーサイドドア」を採用し、独特な個性を強調しています。また、ラダーフレーム構造や高い最低地上高により、本格的な悪路走破性を持つのも大きな魅力です。
サイズ感
FJクルーザーは、日本の一般的なSUVと比べてやや大きめのボディサイズを持っています。全長はおおよそ約4,635mm、全幅は約1,905mm、全高は約1,840mmとなっています。また、ホイールベースは約2,690mmあります。
サイズ感は、トヨタの他のSUVである「ハリアー」や「RAV4」よりも一回り大きく、むしろ「プラド」に近い印象です。全幅が1.9メートルを超えているため、日本の立体駐車場には対応していない場合も多く、駐車場所の確保には注意が必要です。
一方で、最小回転半径は約5.7メートルと、大型SUVとしては比較的取り回しが良好です。四角く視認性の高いボディ形状や高いアイポイントも相まって、見た目ほど運転の難しさを感じさせないという声もあります。
特にアウトドアや長距離ドライブでは、このサイズ感が逆に快適さや安心感につながります。広い車内空間と安定感のある走行性能は、大型SUVならではの魅力です。

足まわり
FJクルーザーの足回りは、オフロード走行に耐えるために設計されたタフな構造が特徴です。舗装路での快適性をある程度保ちながらも、悪路での走破性を最大限に引き出すバランスが取られています。
サスペンション構成
- フロント:ダブルウィッシュボーン式独立懸架
- リア:4リンク式リジッドアクスル(コイルスプリング)
この組み合わせにより、フロントでは路面追従性と快適性を両立し、リアでは悪路での安定性と耐久性を確保しています。特にリジッドアクスルは、クロカン4WD車に多く採用されており、ねじれや凹凸に強い構造です。
4WDシステム
FJクルーザーはパートタイム4WD方式を採用しており、オンロードではFR(後輪駆動)で走行し、必要に応じて4WDに切り替えることが可能です。また、一部グレードにはリヤデフロック(差動制限装置)やアクティブトラクションコントロールが装備され、滑りやすい地形でも高い走破性を実現します。
ジムニーノマドの基本スペック
この章ではまず、両モデルの基本スペックを紹介し、その上で選ぶ際のポイントを整理します。以下はジムニーノマドの基本情報をご紹介します。
ジムニーノマドってどんなクルマ?

ジムニーノマドは、ジムニーシエラをベースにした5ドア・ロングボディの本格クロカンSUVです。ジムニーらしいラダーフレーム構造やパートタイム4WD、副変速機付きといった“ガチ四駆”のメカニズムはそのままに、ホイールベースを伸ばして後席と荷室のスペースを拡大しているのが特徴です。
3ドアジムニーだと後ろが狭くて家族や友人と出かけるのが大変…という人でも、4人が無理なく乗れて荷物も積みやすく、街乗りからアウトドア・雪道まで1台でこなせる「実用性の高いジムニー」というキャラクターのクルマです。
サイズ感
ジムニーノマドは、全長およそ3,890mm、全幅約1,645mm、全高は約1,725〜1,730mmクラスのコンパクトSUVサイズの5ドアモデルです。ホイールベース(前輪〜後輪の間隔)は約2,590mmで、3ドアのジムニーよりひとまわり長く、そのぶん後席と荷室に余裕が出ています。
また数値以外でのサイズ感は、「見た目ゴツいけど、中身は日本で扱いやすいコンパクトSUV」です。全長はコンパクトカー並みで、立体駐車場やコインパーキングでも困りにくい長さ、全幅も1.6m台クラスで、狭い住宅街や裏道でもそこまで気を張らずに走れます。
一方で全高は高めで、四角いボディと相まって“縦に大きい箱”のような存在感があり、アイポイントも高く見晴らし良好。3ドアジムニーよりホイールベースが伸びている分、後席と荷室に余裕が生まれ、「ジムニーらしい本格四駆のキャラはそのままに、4人乗りの日常車としても成立するサイズ感」に仕上がっているのがポイントです。

足まわり(サスペンション・骨格)
ジムニーノマドは、今どきかなり珍しいくらいの本格四駆構造です。
- ラダーフレーム構造
乗用車がよく採用するモノコックボディではなく、はしご型フレーム(ラダーフレーム)の上にボディを載せるトラック的な構造。
→ ボディとは別にフレームが荷重やねじれを受けるので、悪路での耐久性・剛性に強い。 - 前後リジッドアクスル(3リンク リジッドアクスルコイル)
前輪・後輪ともに、左右のタイヤががっつりつながった“車軸(アクスル)”式。サス形式は3リンク+コイルスプリング。
→ 左右のストローク差が大きく取れるので、岩場や轍で片輪が落ちても反対側がしっかり接地しやすい構造。
→ 乗り心地の洗練度は独立懸架SUVに劣るけど、「タイヤが地面を離れにくい=オフロードに強い」。
駆動方式・トランスファー
駆動系も完全にクロカン仕様です。
- パートタイム4WD
通常はFR(後輪駆動)で走り、路面状況に応じて4H(4WD高速)/4L(4WD低速)に切り替える方式。
→ 乾いた舗装路ではFRで、雪道・悪路では4WDに切替、という“オフロードの定番スタイル”。 - 副変速機(トランスファー)付き
4L(ローレンジ)に入れると、ギア比がグッと重くなって、- 急坂の登り下り
- 泥や深雪での脱出
- 岩場の低速トライアル
などで、エンジン回転をあまり上げずに力強く、かつゆっくり動かせる。
→ 「進む」より「這う」イメージの動き方ができるので、本気オフロードではここが生命線。
エンジン性能と走行性能の比較
SUVを選ぶうえで重要なポイントのひとつが、エンジン性能と走行性能です。FJクルーザーはそのユニークな外観だけでなく、力強い走りと安定感のあるドライブフィールでも注目されています。ここでは、両者のエンジン性能と走行性能について詳しく見ていきましょう。

ランクルFJのエンジン性能と走行性能
ランクルFJは2.7Lの自然吸気エンジンを搭載しており、パワーと耐久性のバランスが取れた構成です。最高出力は163PS、最大トルクは246Nmで、ラダーフレームと組み合わせることで高い耐久性と悪路走破力を発揮します。6速ATとの組み合わせで、街乗りから長距離まで対応可能な走行性能を持ちます。
ジムニーノマドのエンジン性能と走行性能
ジムニー ノマドは、シリーズ初の5ドアモデルとして登場した本格派クロスカントリー車です。1.5LのK15B型自然吸気エンジンを搭載し、街乗りからアウトドア走行まで幅広く対応。
副変速機付きのパートタイム4WDやラダーフレーム構造、3リンクリジッドアクスルサスペンションなど、伝統的なジムニーの走破性を受け継ぎつつ、長いホイールベースによりオンロードでの快適性も向上しています。悪路での安定した走行性能と、日常での扱いやすさを両立した一台です。
オフロード性能の違い
SUVの魅力は、舗装された道路だけでなく、悪路やアウトドア環境でも頼りになる走破力にあります。特にFJクルーザーは、そのルーツが本格オフローダーであることから、優れたオフロード性能を誇ります。ここでは、他のSUVと比較しながら、それぞれのオフロード性能の違いをわかりやすく解説します。

ランクルFJのオフロード性能
ランクルFJはラダーフレーム構造、パートタイム4WDシステム、そして高い最低地上高を備えており、未舗装路や砂利道、雪道などでも安心して走行できます。さらに悪路走行に最適化されたアプローチアングルやデパーチャーアングルも設計されており、本格的なオフロード走行が可能です。
ジムニーノマドのオフロード性能
ジムニー ノマドは、オフロード性能に特化した設計が魅力の本格4WD車です。伝統のラダーフレーム構造と3リンクリジッドアクスル式サスペンションを採用し、悪路での高い耐久性と接地性を確保。
最低地上高210mmや副変速機付きパートタイム4WD(2H/4H/4L)により、ぬかるみや急坂といった過酷な地形でも安定した走破力を発揮します。ホイールベースが延長されたことで直進安定性が増し、傾斜地でも扱いやすくなっています。
価格帯とコストパフォーマンス
車を購入する際、多くの人が気にするのが価格とその価値、つまり「コストパフォーマンス」です。FJクルーザーは新車販売が終了しているものの、中古市場では根強い人気があり、価格も比較的高水準を保っています。ここでは、FJクルーザーとジムニーノマドそれぞれの価格帯と、それに見合う性能や価値について詳しく見ていきましょう。

ランクルFJの価格帯とコストパフォーマンス
ランクルFJの予想価格は300万円台後半〜400万円前半とされており、ランドクルーザーシリーズとしては比較的手の届きやすい設定です。その分、信頼性とブランド価値を備えながら価格を抑えた点が評価されています。
ジムニーノマドの価格帯とコストパフォーマンス
ジムニーノマドは新車価格で約260万円台~とランクルFJに比べ少々リーズナブル。燃費の良さを加味すると、維持費も含めたトータルコストで高いコストパフォーマンスが期待できます。
どちらを選ぶ?
ランクルFJを選ぶべきなのは、本格的なオフロード走行や長距離移動を視野に入れた使い方をする方、またランドクルーザーブランドの信頼性を重視したい方です。家族でのキャンプやアウトドアを快適に楽しみたい人にもおすすめです。
ジムニーノマドは、街乗り+週末レジャーを手軽に楽しみたい方、また維持費や初期コストを抑えたい人に向いています。狭い道での運転が多い方や、ソロキャンプなど軽装でのアウトドアを楽しむスタイルにもフィットするでしょう。
まとめ
ランクルFJとジムニーノマドは、どちらも優れた特徴を持つ車種ですが、使用シーンや重視するポイントによって選ぶべきモデルは異なります。
信頼性と走破性、快適性を重視するならランクルFJ。機動性とコストパフォーマンスを求めるならジムニーノマド。
自分のライフスタイルに合った選択をすることで、満足度の高いカーライフが実現できるでしょう。

