車両盗難の現状と「ゲームボーイ」の影響
車両盗難は依然として深刻な社会問題であり、
手口は年々巧妙化しています。
特に最近では、デジタル技術を悪用した盗難が増加傾向にあり、
被害者の多くが高級車や人気車種のオーナーです。
鍵を使わずとも車を解錠・始動できる「キーレス技術」が便利な反面、新たなリスクも生んでいます。
最近の車両盗難の傾向
警察庁の統計によると、近年の車両盗難件数はやや減少傾向にありますが、一方で高級SUVやハイブリッド車など人気モデルに狙いが集中しています。
また、都心部だけでなく郊外や住宅地でも被害が報告されており、場所を問わず注意が必要です。
「ゲームボーイ」がもたらす新たな脅威
近年話題になっているのが、見た目が懐かしのゲーム機に似た「ゲームボーイ型」の盗難ツールです。
このツールは、一部の車種に対して正規のキー信号を模倣し、不正にドアを開けてエンジンを始動させることができます。
外見が玩具のようなため、発見されにくいという問題もあります。
ゲームボーイとは？その機能と特徴
「ゲームボーイ型ツール」は、名前こそ親しみやすいものの、その実態は高度な電子機器です。
欧州などで開発されたものが密かに出回り、
一部の自動車に対して極めて高い成功率で不正解錠が可能です。
ゲームボーイの基本機能
この機器は、本来は整備士向けに開発された診断・通信機能を持つデバイスを不正に改造したものです。
対象車種に特化したソフトウェアが搭載され、
電子制御ユニット（ECU）と通信してドアロックの解除やエンジン始動の命令を実行できます。
悪用される理由とその手口
最大の特徴は、短時間で作業が完了し、
物理的な痕跡がほとんど残らない点です。
犯人は深夜や早朝に住宅街を歩きながら、
対象車種を探し、「ゲームボーイ」を使ってわずか数分で車を持ち去ります。
このため、発見が遅れ、追跡も困難です。
ゲームボーイによる盗難手法の詳細
従来の車両盗難では、物理的な破壊や「リレーアタック」などが主流でしたが、「ゲームボーイ型ツール」は新たなカテゴリーとして警戒されています。
リレーアタックとの違い
リレーアタックは、スマートキーの信号を中継して車を開ける手法ですが、ゲームボーイ型は車両内部の通信を直接操作する点が異なります。
そのため、スマートキーを持っていなくても犯行が可能で、防御が難しいのが特徴です。
具体的な盗難手順とは？
① 事前にターゲット車両を下見
犯人は駐車中の高級SUVやトヨタ車（例：ランドクルーザー、ハイエースなど）を調査。
ドアロックの有無、防犯グッズの有無を確認。
通常、犯行者は数週間前から犯行経路などといった周辺環境を念入りに視察しているといわれています。
② 解錠（ドアロック解除）
CANインベーダー機能付きゲームボーイ型機器を使用。
フェンダー裏などからCAN配線にアクセスし、ドアロック信号を送信して正規キーなしで開錠。
③ OBD端子へアクセス（多くは運転席左足元）
ドア解錠後、車内に侵入。
運転席左下にあるOBDポートに、ゲームボーイ型機器を直接接続。
一部モデルではCAN-BUS経由で直接通信するため、OBDに触れないことも。
④ イモビライザー無効化・キー登録
OBD経由で車両のECUにアクセスします。
新しいキーを不正に登録したり、イモビライザーを無効化し、わずか数分でエンジン始動が可能に。
⑤ 乗り去り（無音・無破壊）
セキュリティが作動せず、クラクションも鳴らない。
鍵を差していないのに正規キーのようにエンジン始動し、数分で盗難が完了します。
特に狙われやすい車種
・トヨタ車（ランドクルーザー、ハイエース、アルファードなど）
・レクサス車
・国産SUVやピックアップ（盗難ランキング常連）
防止策の一覧
| 対策 | 効果 |
|---|---|
| OBDガード | 不正なOBDアクセスを物理的に防止 |
| CANインベーダーガード | CAN信号を遮断、無効化 |
| ステアリングロック | 時間稼ぎと抑止力 |
| GPSトラッカー | 盗難後の追跡用 |
| セキュリティアラーム | 異常感知・警報発動 |
車両盗難から愛車を守るための対策
盗難リスクを最小限に抑えるには、
複数の対策を組み合わせることがもっとも重要です。
技術的な防犯アイテムと、日常的な心がけの両方が求められます。
効果的な防犯アイテムの紹介
ステアリングロックやタイヤロックなどの物理的な防犯器具は、犯行をあきらめさせる心理的効果があります。
また、GPS追跡装置や通信遮断装置（ジャミング対策）の導入も有効です。
さらに、OBDポートのロックや、セキュリティ強化型のカーアラームもおすすめです。
日常的な注意点と対策
車を停める場所にも注意が必要です。
自宅ではカーポートに防犯カメラを設置し、
外出先では人通りが多く照明のある場所を選びましょう。
また、スマートキーの保管場所も重要で、
電波遮断ポーチなどに入れておくことで、
リレーアタックへの備えになります。
駐車の仕方にも一工夫
また実際に車両盗難の被害に遭ったオーナーが、被害調査関係者から聞いたリアルな盗難対策として有効なのが、駐車方法です。
ゲームボーイ型装置を用いた犯行では、対象車種の左側（助手席側）に設置されたOBDポートや配線部に機器を接近させることで犯行を働くとみられています。
そのため、駐車の際は車体左側を限界まで壁などの障害物に寄せ犯人を入り込めなくするなど、
犯行を物理的に阻止することが効果的とされています。
「ゲームボーイ」に対抗するための最新技術
盗難技術の進化に対抗するには、自動車メーカーやセキュリティ企業が開発する最新技術にも注目する必要があります。
デジタルセキュリティの進化
最近では、ブロックチェーンを応用したセキュリティ技術や、車両の異常通信をAIが検知するシステムも登場しています。
また、通信の暗号化技術が進化しており、
不正アクセスを事前に防ぐ手段が増えています。
新しい防犯システムの導入
一部のメーカーでは、スマートフォン連携型のキーレスエントリーや、生体認証を用いたエンジンスタート機能を導入しています。
これにより、物理キーや既存信号の模倣では操作できない環境を作り出しています。
まとめと今後の展望
車両盗難は日々進化しており、最新のツールである「ゲームボーイ型」ツールの存在は、
従来の防犯対策を乗り越える脅威となっています。
愛車を守るには、常に新しい情報を把握し、
多層的な対策を講じることが重要です。
車両盗難対策の重要性
自動車は高価な財産であり、盗難の被害に遭えば経済的・精神的な負担が大きくなります。
普段から防犯意識を持ち、早期の対策を心がけることが、自分と家族の安心につながります。
未来の防犯技術への期待
今後は、さらに高度なセキュリティ技術が普及することで、盗難そのものが困難な時代が来ることが期待されます。
自動車とIT技術が融合した「スマートカー時代」の防犯には、私たち自身の情報リテラシーも求められます。
